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インプラント治療はどのような歯科医院で行ってもらうべきなのでしょうか?

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困った顔

歯科は判りにくい

歯科は他科に比べて判かりにくい。特にインプラント治療をする場合は、どうやって医院選びをしたらよいのか判らない!

過日、とある医療ジャーナリストさんとお会いした時にそんな事を訊かれました。

インプラント治療はかなり普及し、おそらく日本の3割程の歯科医院で実施されているものと思います。

インプラント治療は歯科の中でも特殊性が高く、口腔外科だけではなく、保存・補綴・矯正など、小児歯科を除くすべての科の知識と、内科・耳鼻咽喉科などの医学的知識を集結した総合力の結晶です。歯科医院ごとに考え方はもちろん、知識技量の差はどうしても出てしまいます。

インプラント治療に適切な歯科医院選びについて考えます。

インプラント治療前に確認したい10項目

手前味噌ですが、以前よりこのような記事を挙げておりました。

この10項目は2012年頃に最初にアップしたもので、基本的には今も変わりません。ですからこの10項目が満たされていれば信頼できると思います。専用の手術室があるとか、認定証が多くあるとかは参考になりません。

しかし時代とともに補足が必要になってきましたので、ここで加筆します。

インプラント治療の早い・うまい・安いとは?

患者さんがインプラント治療をする時にまず気にするのが、「痛くないか・早く終わるか・安く済むか」の3点、要するに「早い・うまい・安い」で、昔の牛丼屋さんのキャッチフレーズを思い出します。

そのためウェブを検索すると、いわゆる激安インプラントや、無痛、すぐ噛めるなど、治療を行う上での心配を払拭しようとする熱心な文言を多く見かけます。

問題なのは、それをもってして良いインプラントを行う歯科医院なのか、そしてこれらの情報は信頼できるのか、です。

私の考えは、牛丼屋化したインプラント治療は、ちょっと待てということです。以下、その問題点を挙げてみます。

安い

価格は確かに治療を選択するうえで重要なポイントです。しかし安けれは何でも良いというわけではありません。

いわゆる激安インプラントというものがあるのですが、何かと治療後に相談が持ち込まれるのは、安さに惹かれて治療を行った方々であることが多いものです。

本来ありえないような金額が掲載されていますが、私が知る限りではまずそのような金額で治療が終わるわけではないようです。表示価格はあくまで客引きで、不動産広告の「駅まで5分」と変わりません。治療が進むうちに、あなたの場合はコレではできませんから、コチラにしましょうと価格がどんどん上がって行くそうです。

人の体は一様ではありませんので、治療の難易度には大きな開きがあります。治療とはインプラントという商品を買うのではなく、インプラントによる「噛む機能」を買うわけですから、口の中を見ずに価格が決められるはずはありません

という訳で、安価なことを前面に出している医療機関の情報は、話し半分に聞いておいた方が良いと思います。設備・材料・人件費・最新の知見を得る研修費を加味すれば、一本30万円以下は疑ってみるべきでしょう。

それからインプラント治療の患者欲しさにCT撮影無料を打ち出していている所がいまだにあるようですが、以下のような理由でまったくお勧めできません。

なぜ無料なのか、良心的なところもあるかもしれませんが、だいたいは裏がある事を見抜かなくてはなりません。

早い

インプラントは基本的には手術で入れたあと1ヶ月以上静置し、骨と十分結合した後に、仮りの歯を連結し噛ませることになります。

この治療期間をできるだけ短くしたり、インプラントを入れると同時にすぐ噛ませる、このような研究は進んでおり、それを売りにするところもあります。

しかし万人に共通というわけではなく、そうならなかった場合も想定しなくてはなりません

たとえば「即時荷重」といって、静置期間を置かずに手術後ただちに仮の歯を連結し噛ませましょうという技術があります。

すぐに噛めるので患者さんにとっては福音なのですが、どんな患者さんにでも適用できるわけではありません。

また即時荷重をするつもりだったけど、手術をしてみたら無理そうだったので安全策をとって静置期間を置くことだってあります。これは医学的に安心なのですが、もちろんその日のうちに噛める状態に戻す事はできません。即日噛めるという約束をしていたなら、不信になって当然です。

ですから即時荷重できなかった場合はどうするかなどの話を、予め十分詰めておき、同意書に記載しておく必要があります。

また保存できない歯を抜き、直ちにインプラントを入れる「抜歯即時埋入(ばっしそくじまいにゅう)」という方法があります。手術が一回で済むので喜ばれるのですが、抜歯後の搔爬(お掃除)が不完全だと感染による失敗の可能性が高まります。裸眼での搔爬はちょっと無理で、顕微鏡や高倍率のルーペが必要になります。

また骨補填材といって抜歯した穴とインプラントとの隙間を埋める人工材料が問題を起こす事もあります。骨補填材はいずれ骨に置き代わるはずで使っているのですが、中には骨にならずそのまま異物として残ってしまうものがあります。それが感染源になり、インプラント周囲炎になるケースが意外に多いのです。

補填材が骨に置き換わるには様々な条件があり、うまく行く場合と行かない場合があります。その見極めが重要なのですが、結果はだいぶ後にならないと判りません。

以上のように、治療の早さを優先してしまうと、どうしても確実性が落ちてしまいます。本来高度な診断と手術技術が必要な分野ですので、確実性を落としてまで治療を急ぐ事がないように、よく話を聞いておく事が大切です。

即時荷重は、一度に数本のインプラントを埋入し、それらを強固に連結することで実現します。All On 4と呼ばれる総義歯の変わりとなる大型の連結になるほど有効な手段です。

逆に最も単純な一本だけのインプラントは、骨とまだ結合してない状態で噛む力を加えるとネジが逆回転して外れる方向に動きますので、当日から噛ませることはできません。

うまい

牛丼の場合は味が「旨い」ですが、この場合は上手という意味の「うまい」です。さて何をもってしてうまいのでしょう?

よく言われるのが、手際の良さです。が、残念ながらこれは患者さんには判断できません。

多くの症例数(インプラント手術経験数)をお持ちの先生であれば、うまいかもしれません。それが一つの判断材料になるという意見もあります。しかし私はそれにはかなり懐疑的です。

なぜなら顕微鏡の出現により、従来と違って抜歯しなくても十分残せる歯が増えたからです。それに連れインプラントの件数が減るのが普通です。

はたしてインプラントの症例数を高らかに誇示する歯科医院では、歯の積極的な保存が行われているのでしょうか?それを確認しないと、残せるはずの歯を抜歯してインプラントにする可能性があります。ですからセカンドオピニオンが必要なのです。

もちろん口腔外科専門で開業し、紹介でインプラント手術を承る歯科医院では多くの症例が集まり、高い技術があることでしょう。しかしそういう所は、わざわざ症例数を誇示するようなことはしません。

自分は「うまい」と強く発信しているところは、ちょっと気をつけた方がよいというのが私の実感です。

インプラント周囲炎予防など治療が終わった後の事を考える

このサイトで再三取り上げているように、今一番問題になっている事はインプラント周囲炎の予防と治療です。

まず、歯科医院はインプラント周囲炎にならないような体制でアフターケアのシステムを整えておかなくてはなりません。そのためには専門知識を持った常勤の歯科衛生士が勤務していて欲しいです。

そして患者さんはインプラント手術をする前に、正しい歯ブラシの方法を教わり、会得しておく必要があります。それが可能な歯科医院を選ぶことは非常に大きなポイントになります。

患者さんとはどうしても手術時の不安ばかりして、その後のことまで考える余裕がありません。ですからつい目先の「早い・うまい・安い」を優先してしまいます。そしてインプラントが入った後のメンテナンスの事は、手術後にすっかり忘れてしまうことが多いのです。

しかしメンテナンスとは、実はインプラント手術の前から始まっています。それを継続し、手術後も伴走してくれるような体制の歯科医院を選ぶ必要があると思います。

結論

では結論です。インプラント治療はどのような歯科医院で行ってもらうべきなのでしょうか?一言で表すならこうです。

インプラントを長持ちさせる知識・技術・設備・人材を持った所を選ぶ

そのために患者さんは、以下を確認すべきでしょう。

  • 治療を急がず、きちんと考える時間を確保する
  • 予定通りに行かなかった場合はどうするのかが同意書に記載されているか
  • インプラント周囲炎の予防や対策ができる知識・設備・技術・人材が整っているか
  • 健康保険外の定期管理体制があり、逐次歯ブラシや噛み合わせをチェックしてもらえるか
  • 手術前から予後まできちんと診てアドバイスができる歯科衛生士が常勤しているか

これに食事などの日常生活の栄養アドバイスができるシステムがあればなお良しです。以下をご参照ください。

インプラント治療はきちんとした手順を踏めば、決して難しいものではなく、怖がる必要もありません。

しかし歯科医院間での過当競争が繰り広げられるようになり、早い・うまい・安いを前面に出す歯科医院が増えています。

本当にそうなら良いのですが、実はそうではなかったという話しが相談に持ち込まれるわけです。残念ながら、このような話は今後も増えて行くと思います。

ですから、どうか目先に捉われず、長く持たせるために何をやるべきかを優先に考えてください。

 

吉田 格
いかがだったでしょう。魅力的な価格や新技術も、決して誰にでも当てはまるわけではありません。

またそれらに目を奪われて、後々の事に気が回らないようでは困ります。ですから、きちんと管理してもらえる体制ができている歯科医院を選ぶ必要があります。

そのためにも、面倒くさがらずに何軒かの歯科医院で話を聞いてから選ぶ事をお勧めします。

不動産を買ったり借りたりする時は、何軒かを回ると思います。それと同じような気持ちでインプラント治療を選んで欲しいと思います。

健康保険で安く早く治療をしてもらっていた頃とはだいぶ話が違いますので、それと同じようには考えないようにしたいものです。

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