- Q1:最近「保険ではできません」と言う歯科医院が増えています。なぜなのでしょうか?
「医療はすべて健康保険で受ける事ができるはず」たいへん残念なのですが、この常識は少なくとも歯科においてはもはや過去のものとなってしまいました。
最大の原因は国の低医療費政策が長らく続いてきたことです。国策として歯科医療とは優先順位が非常に低いのです。これは決して良く知られている事ではありません。
長らく日本の美点の一つと賞されてきた国民皆保険制度
ですが、医学的にも社会的にもたいへん多くの矛盾を含み、厳しい治療制限が存在します。ここでその一つ一つの解説はできませんが、それらは今後も是正される見込みはありません。健康保険の枠組みで治療している以上、患者さんに未来の安心を提供する事がたいへん難しい、これが保険ではできないという一番目の理由です。
そしてこのまま保健医療を続けて行くと、患者さんだけでなく歯科医師自身も危なくなってしまうというのが二番目の理由です。低医療費政策もここまで来ると、保険診療の収入だけでは本当に経営的に行き詰まります。多くの普通の歯科医院は財政的に非常に厳しい状況にあり、不採算な保険治療はできるだけ行いたくないというのが本音です。
さらに困った事に健康保険とは技術評価がまったくない欠陥制度であるため、良い治療をすれば即赤字に転落するようにできています。すなわち時間をかけて丁寧に診療する歯科医院であればあるほど赤字になり、逆に低質な医療で数をこなす事が上手な歯科医院が黒字となります。
普通の患者さんは混んでいる歯科医院は良い歯科医院であると勘違いしますし、短時間で終わる事を腕が良いからと思いたくなります。治療は痛いし面倒だから早く終わらせてほしいという思いも手伝って、非常に簡単に治療する歯科医院の評判は高くなる傾向にあります。
信じられないかもしれませんが、日本では不完全な歯科治療による二次被害や再治療が日常化しています。これは医学の進歩とは相反する日本独自の現象です。一見治療に見えるそれは、実は破壊に繋がっている、これは新聞でも取り上げられるほどです。【読売新聞「医療ルネサンス」2005年8月16日】
以上のような理由から、日本の歯科医師にとって健康保険の治療とは非常に不本意であり、諸外国並みの技術や材料を使って常に診療したいと誰もが願っています。
しかし国が定めた制度である以上、何も知らないで患者さんが健康保険でと言えば従うしかありません。また「患者さんのため」と規格外の材料や技術を保険と併用すると、それは俗に「混合診療」と呼ばれなぜか違法となります。さらに関連する治療もすべて保険が使えなくなるという、日本独特の理解しがたい壁が存在します。
では保険の規定を使わずに治療をするとどうでしょう。新技術取得はもちろん、患者さんに治療のメリット・デメリット、費用や今後の見通しなどを細かく説明する時間が大幅に増えます。賛同していただけなかった患者さんは別の歯科医院に転院してしまうかもしれません。歯科医院はすぐ近くにもあるのです。
以上のように保険外の診療を勧めることは、それ自体が経営リスクを高める事に直結します。しかしインターネットの時代に入り、保険ではとうてい実現できない医療を周知していただく事がそれほど難しくなくなってきました。同時に歯科健康保険の質に疑問を持つ患者さんが顕在化してきた事もあり、今やほとんどの歯科医院で何らかの自由診療のメニューが用意されて今日に至っています。

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