インプラントのすべてがわかる本 インプラント周囲炎が発見されたら

インプラント周囲炎が発見されたら

不幸にしてインプラント周囲炎が発見されると、ことはちょっとやっかいです。感染源は深くまで入り込み、ポケットから器具や薬を入れても取り除くことはできません。

手術は必須

良いのか悪いのかはわかりませんが、インプラント周囲炎は相当進行しても歯のようにグラグラしてくることはありません。

下の写真は左のインプラントがやられているのですが、外見からは異常を判断する事はまったくできません。しかしレントゲンでは骨がなくなっている状況がはっきりわかります。

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急性の腫れにでもならない限り自覚症状がないため、治療を促してもなかなか取り合ってもらえず、苦労することがあります。放っておくと急性化しなくても本当にポロッととれてしまいます。

インプラント本体表面は骨と結合するためにヤスリのような粗目になっています。しかしその結合が剥がれ、炎症で骨が逃げて行き、粗目に細菌が入り込みバイオフィルムが形成されてしまうともう除去は難しくなります。

そうでなくともインプラント本体はネジ状になっていますから、器具を入れてもネジ山の間にはほとんど当たりません。ポケットから器具を挿入しても、器具の向く方向が限定されますので、効果はほとんど期待できません。

インプラント周囲炎が確認されたら、まず抗生物質の注入と飲み薬が必要です。バイオフィルムは破壊できませんが、歯肉や骨に入り込んだ細菌を叩くのには効果があります。

しかし薬は何日も使えないので、根本的に感染源を叩く必要があります。それにはやはり歯周炎の治療と同じように手術が必要です。

手術は麻酔をしたあと歯肉を剥がし、骨やインプラント体の深部が見える状態にし、痛んだ歯肉を除去します。すると、インプラント周囲で骨がすり鉢状になくなっている状況が観察できます。この状況であればかなり自由に器具を操作できるので、インプラント体を機械で掃除することができます。

現在最も効果的と思われる方法は、β‐TCPと呼ばれる特殊なカルシウムの粉を強圧で吹きかけてインプラント体表面を掃除するものです(*)。清掃効果が高いだけでなく、粉が残留しても安全な点も
評価されているようです。

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この後、骨を再生させるためにGBR(57ページ参照)を行うこともありますが、通常はそのまま傷を閉じて終了です。

手術をしないで、ポケットからレーザーを用いたり薬を塗布したりするだけで済ませることもあるようですが、まったくお勧めできません。これらは一時的に炎症を抑えることはできても根本的な解決にはほど遠いのです。

特にレーザーは名前からして未来的なイメージがあり、何かとても素晴らしい治療ができそうな気がしますが、ポケットから入れてもそのエネルギーがインプラント全体に行き渡ることはありません。有効に使うなら、やはり手術でインプラント体を見える状態にしてからでなくてはいけません。その状態でレーザーを使うのであれば効果的です。

発症させないことが最も大切

インプラント周囲炎のきちんとした治療は、歯周病やインプラントの手術を丁寧に行える先生であれば難しい処置ではありません。しかし簡易な手術しかできない施設では難しいでしょう。つまりインプラント周囲炎の処置はどこの施設でもできるものではないのです。

あまりにもインプラント周囲炎が進んでしまった場合は無理に残そうとはせず、いったんインプラントを撤去し骨の回復を待った後での再埋入をお勧めします。その方が明らかに予後がよく安心できるからです。ただし骨の回復は 100% ではなく、骨移殖を伴う可能性もあります(56ページ参照)。

インプラント周囲炎は一度成立すると進行も速く、治すのは困難です。インプラント周囲炎が起きないように、管理を徹底するのが最も大切です。

新品で感染がゼロだったインプラントに細菌が短期間のうちに定着するということは、厳しく見ればその方はそもそもインプラントの適性から外れていたということになります。序章LinkIconを思い出していただき、同じ過ちを繰り返さないようなライフスタイルを確立することが何より大切です。

* 現在は手術時にエルビウムヤグレーザーによる骨の整形を併用しています。レーザー単独使用の効果は認められていません。

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