本当の敵はハギシリ・カミシメ
咬合に関わる問題のうち、歯に直接悪影響を与えるのが「ハギシリ」と「カミシメ」です。これらはすべてを破壊する原因不明の乱暴者で、どんなにうまい治療も台無しにされる恐れがあります。
一晩で 60 分以上
「あぁ、それなら大丈夫。私ハギシリしてないから」とお思いの方、実は程度の差こそあれハギシリをしていない人はいません。ハギシリよりはカミシメのほうが問題なのですが、どちらも異常な力で噛み続ける点は同じです。
両者の違いは噛んだ状態で止まっている、つまり歯を潰している状態がカミシメで、そこから前後左右に擦るのがハギシリです。
ハギシリはギコギコと不快な音がするので他人が気がついてくれることもありますが、実際にはカミシメの方が多く、音がしないため誰も気がつきません。
その位置も両方の奥歯をギューっと噛み合わせる状態より横にずれており、すなわち側方圧をかけて噛み潰している場合が多いのです。
そのときの咬合力とは恐ろしいもので、普通にガムを噛んでいるときの 4 倍以上といわれています。しかもその持続時間は長い人では一晩で 60 分を超えています。その間は一時的に呼吸が止まっていたり、血圧が上がっていたりすることもあるようです。
起きている間に上下の歯が接触している時間は意外に短く、食事のときと力仕事をしているとき以外はほとんど接触しないはずです。
たとえば証明写真を撮るときなど口を結んではいますが、その中で上下の歯は接触していないと思います。
食事で1回噛んで 0.1 ~ 0.3秒、丸1日分合計しても何分にもなりません。しかも最近の食べ物は軟らかいので、噛む回数は減少傾向です。これくらいのことで人工物はビクともしません。調整さえしっかりやっておけば、長い期間問題なく使えるはずです。
ところがハギシリとカミシメはこれに比べてはるかに破壊的で、人工物はおろか自分の歯でさえも割ったり折ったりしてしまうことがあります。人工物であればなおさら長く使っていると割れる・減るなどの問題が起こりやすくなります。
歯が破損、変形、割れることも
ハギシリをすると上下の歯に同時に異常な力がかかります。このとき「歯 対 歯」ではなく、「歯 対 インプラント」ではどうなるでしう?
インプラントは歯根膜による沈みがありませんから当たりがすぎて、どちらかが破損してくることがあります。特に歯の方に神経がない場合は根が割れたり、歯周病が進行している場合はグラグラしてくることもあります
歯あるいはインプラントの歯冠は壊れないけれども、顎の関節や筋肉が痛む場合もあります。しかしこれはよいほうに考えれば、歯冠が壊れてくれたおかげで関節などが保護されるともいえます。
対策としては 82 ページで説明するマウスピースで噛む圧力を分散させたり、自己暗示法といって常に力を抜けるようイメージトレーニングしたりする方法がありますが、どれも決定的なものではありません。
しかし特に歯冠に白い材料を用いた場合、破損防止のためにマウスピースの装着を強くお勧めします。インプラントで噛めるようになると、突然ハギシリが復活する人も多いようです。
ハギシリの原因は未だにはっきりしていませんが、ストレス解消に役立っていることは間違いなさそうです。猿でもチンパンジーでもハギシリをしているそうで、人の正常な行動の範疇でもあるかもしれません。
問題なのはその強度と頻度ですが、どうも現代人はいつも力が入りっぱなしで、力を抜くことが苦手なのかもしれません。

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