インプラント治療の失敗とは
インプラント治療の成功率は 100%ではありません。失敗の代表例は、インプラントが骨とくっつかないことです。
インプラントはそれ自体が骨と直接くっつくことで機能します。ところがインプラントを入れてはみたがうまく骨とくっつかない、または一度はくっついたが後で剥がれてしまう、簡単に言えばスッポ抜けてしまうことがあります。
最もよくある原因は、歯周病と同じ理由で細菌感染が進行した場合です。ですから最初から歯周病がある方は、そのリスクが高いことを承知しておかなくてはなりません。
またそうでなくても骨が萎縮しやすい傾向の方もおられ、一概に失敗を予測することはできません。これに喫煙や糖尿病が加わると、本来は治療自体を諦めなくてはなりませんが、無理して行えば失敗することは目に見えています。
またこれは施術する歯科医師の技量の問題なのですが、手術時にインプラントの固定が悪く、最初からグラグラしていたり、逆にきつく締めすぎて骨が傷んだりして、結局くっつかないということもあります。
大ざっぱに見て、インプラント治療の成功率は 97% 程度といわれています。私自身もだいたい同じような成功率です。ということは25本に1本は問題が発生したわけで、当然私にも苦い経験があります。
インプラントを推進する先生は「歯は削ったら帰ってこないが、骨は再生するのでやり直しができる」とインプラント治療の優位性を強調します。失敗してももう一度できるから安心してくださいということです。本当でしょうか?
絶対に再生しない歯と違い、骨は確かに再生能力を持っています。骨折してもくっつくのはそのためですし、歯を抜いた後の骨の空洞がいつのまにか埋まるのも同じです。ですからインプラントが抜け落ちた後に開いた骨の空洞も自然に埋まって行きます。
問題はその埋まり方で、全部がきれいに埋まるわけではなく、失敗の仕方によっては、すでに骨が吸収されている表層はあまり再生しません。埋まるのは一番深い部分からなのです。
それでも運良くインプラントに必要な骨の量が確保されていれば再治療は可能ですが、再生量が不十分だと後に述べる「骨移植」あるいは「骨誘導」という少々面倒な手術を併用しなくてはなりまん。
また進行しすぎて手遅れの場合もあり、結局はインプラントを諦めなくてはならないケースも考えられます。
しかし失敗といえども慢性炎症が続くだけですから、痛みなどの自覚症状はほとんどありません。序章でも書いたように、これが発見を遅らせる原因
になります。それでもインプラント手術直後であ
あればすぐ気がつき対処がしやすいのですが、1年以上後の失敗は炎症が進んでいることが多く手遅れになりやすいのです。
ですから定期検診や自己管理はやりすぎるくらいがちょうどよく、施術した歯科医院にはそのようなメンテナンスシステムがなければなりません。
しかしながらインプラントを行う歯科医院のうち、再治療に対し骨移植などで対応できるのはおそらく 1 割ほどです。
その時点でインプラント専門医や大学病院などに紹介していただければ良いのですが、前に述べたように自院ですべて解決しようとする先生も多く、結果的にこれがインプラント治療の評判を落とす一因になっています。
さて再治療ができるといっても手術は手術、できれば避けたいものです。それをもう一度やらなくてはならないことは、患者さんにとって苦痛でしかありません。
またそれを宣告せねばならない歯科医師も情けないもので、信頼関係は揺らぎ、再治療にかかる費用も
負担しなくてはなりません。
私の患者さんにも、2 カ月で完了する予定だった治療が、結局 1年がかりになってしまった例があります。その間の精神的負担もお互い大変なことは言うまでもありません。
インプラント治療には再治療の可能性があること、そして不幸にしてそうなってしまった場合は、どこでどうしなくてはならないか、知っておく必要があると思います。

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